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「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」著:村上春樹

2013/05/17 22:44 に 寺内郁子 が投稿
2013年5月18日(土)

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」著:村上春樹 


多崎つくるの高校時代の親友

「乱れなく調和する親密な場所」をもつグループ5人(男3人と女2人)が

織り成す不思議な人間模様。



無彩色の多崎つくると

その周りのそれぞれの色を持つ人々のミステリアスな絡み合いが、

村上春樹ワールドの中で、脈々と繊細に描かれていきます。

ストーリーの全体に奏でられる「色」と「音」と「意識」の響きあい

色を持たない多崎つくると

繋がりあっっていく人々が持つそれぞれの人格を表す「色」

ストリーの全体を包み込むように流れるピアノの「音」

その曲は、フランツ・リストの「巡礼の年・ル・マル・デュ・ペイ」

「田舎を見た時に覚える言いようのない哀しさ」という意味を持つ。


そして、現実とも幻想とも言いがたいような「意識」の絡み合い

未解決のまま流れていく、いくつものミステリー・・・

「友人・灰田の行方は?」

「ある種の才能を持つ人に与えられる「死のトークン」の存在は?」

「6本の指が示すものは?」

「シロを襲ったレイプと絞殺の真相は?」

「多崎つくるが何度も見る夢の真相は?」

「沙羅が選んだ相手は?」・・・


そのミステリーに出会う度に、

読む人が、それぞれに感じるままに、

それぞれ独自の世界観が繰り広げられていく面白さ。

「たとえ君が空っぽの容器だったとしても、それでいいじゃない。

もしそうだとしても、君はとても素敵な、心を惹かれる容器だよ。

自分自身が何であるかなんて、そんなこと本当には誰にもわかりがしない。

それなら君は、どこまでも美しいかたちの入れ物になればいいんだ。

誰かが思わず中に何かをいれたくなるような、しっかり好感を持てる容器に」

というエリの言葉

人間の器は、

もともと色のない、形のない、空っぽの器。

そこに魂が入り込み、

色を付け、形を創造していくもの

それを、どんな風にアレンジし、描いていくかは、

あなたの心・魂が決めていくもの。


いかようにも変化することのできる巡礼の旅、今あなたは、どんな旅をしていますか?


☆ いくこ&のぼる

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